2026会計年度歳出法案におけるE15通年販売
要旨
2026会計年度の政府予算案は、中西部選出議員らによる超党派連合の「反乱」により、極めて深刻な膠着状態に直面している。同グループは、E15(エタノール15%混合ガソリン)の通年販売を恒久的に認める適用除外条項の導入を要求している。2026年1月30日の政府閉鎖期限が迫る中、指導部には「コーンベルト(トウモロコシ地帯)」選出議員と産油州選出議員の対立する利害を調整し、法案通過に必要な票を確保することが求められている。
背景:E15の規制障壁
E15はエタノール15%、ガソリン85%を混合した燃料である。通常のE10よりもオクタン価が高く(88)、価格も1ガロンあたり10〜30セント安価であるが、現在の通年販売には制限がある。
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「夏季販売禁止」: 大気浄化法(Clean Air Act)の揮発性(RVP)基準に基づき、夏季(6月1日〜9月15日)のE15販売は、スモッグ発生を抑制するため原則として禁止されている。
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立法の目的: 推進派は、エタノール生産者や小売業者に市場の確実性を提供するため、通年販売を認める恒久的な法的適用除外を求めている。
現状:1月30日のデッドロック
この問題は単なる地域的なエネルギー論争から、予算案全体の成否を握る「ポイズン・ピル(毒薬条項)」へと発展している。
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ナン修正案連合: ザック・ナン下院議員(共和党、アイオワ州選出)を中心とする約12名の議員は、E15の通年販売条項が含まれない限り、予算案をブロックする構えを見せている。
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指導部案への反発: 1月19日に発表された予算案の草案ではE15条項が除外されており、これに対し中西部勢は「事前の合意違反」であるとして即座に猛反発した。
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ホワイトハウスの関与: 1月21日現在、政権側も政府閉鎖を回避すべく仲介に入っており、環境保護庁(EPA)の夏季大気質懸念と農家の要望を調整している。
ステークホルダー分析
| 関係者 | 立場 | 主な懸念事項 |
| 中西部議員連合 | 賛成 | コーン農家の経済的利益、有権者向けのガソリン価格抑制。 |
| 産油州議員 | 反対 | 既存製油所のシェア低下、技術的なコンプライアンスコスト。 |
| 下院指導部 | 中立/実務 | 1月30日までの予算成立に向けた過半数票の確保。 |
| 小売業者(ガソリンスタンド) | 賛成 | 設備投資を正当化するため、不安定な「緊急時特例」の終了を要望。 |
戦略的展望と提言
この条項への対応を誤れば、継続予算(CR)による延命か、あるいは短期間の政府閉鎖を招く可能性が高い。以下の解決策が考えられる。
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直接導入: 2026年度歳出法案の本文に「ナン修正案」を盛り込む。
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規制プロセスの妥協: 即時の支持と引き換えに、EPAに対して特定の期日までに最終規則を策定させる文言を挿入する。
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「石油連盟(API)とのディール」: 米国石油連盟(API)が最近示した、再生可能燃料基準(RFS)の長期的な改革と引き換えにE15を支持するという妥協案を活用する。
一括歳出予算案(ミニバス)の状況
概要
連邦議会は現在、現行の暫定予算(CR)が期限を迎える2026年1月30日を前に、政府機関の部分的閉鎖を回避すべく、2026会計年度(FY2026)歳出予算案の最終調整を行っている。全4段階の「ミニバス」パッケージのうち、焦点は先般可決された「第2ミニバス」と、新たに発表された「最終ミニバス」合意案に移っている。
背景
2026年度の予算編成サイクルは、政権側が提案する大幅な歳出削減と、科学研究や社会保障制度の維持を目指す超党派の取り組みとの間の優先順位の乖離が特徴となっている。立法プロセスは現在、進捗状況の異なる複数のパッケージに分かれて進行している。
各ミニバス・パッケージの分析
1. 第2ミニバス (H.R. 6938)
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ステータス: 1月15日に上院を通過。現在、大統領の署名待ち。
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対象部局: 商務・司法・科学(CJS)、内務・環境、エネルギー・水の3分野。
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主な内容: 全米科学財団(NSF)に対する大幅な予算削減案を拒否し、約87.5億ドルの予算を維持。また、政権交代等による年度途中の助成金打ち切りを防ぐための「ガードレール」条項をエネルギー省予算に盛り込んでいる。
2. 第4(最終)ミニバス
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ステータス: 1月20日に法案テキストが公開。今週末までに下院での採決が予定されている。
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対象部局: 国防、労働・保健福祉・教育、運輸・住宅都市開発(THUD)、国土安全保障。
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主な規定:
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医療関連の期限延長(Extenders): メディケアにおける遠隔診療(テレヘルス)の柔軟な運用を2年間(2027年まで)、および「Hospital-at-Home(在宅入院)」の免除プログラムを5年間延長。
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予算規模: 保健福祉省(HHS)に1,166億ドル、運輸インフラに約251億ドルを配分。
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論点: 国土安全保障(特にICEおよび国境政策)に関する予算が最大の争点となっており、財政保守派に配慮して当該項目のみ分離して採決が行われる可能性がある。
予算案ステータス一覧
| パッケージ | 含まれる主な予算案 | 現在のステータス(2026年1月22日時点) |
| 農務・退役軍人 | 農務、退役軍人、立法府 | 成立済み(2025年末) |
| 第2ミニバス | 商務・司法・科学、内務、エネルギー・水 | 大統領署名待ち |
| 第3ミニバス | 国務・対外オペレーション、財務 | 上院採決待ち |
| 最終ミニバス | 国防、労働・保健福祉、運輸・住宅、国土安保 | 法案公開済み、採決待ち |
タイムラインと今後の展望
立法に残された時間は極めて短い。下院は1月30日の期限までに上院が1.2兆ドル規模のパッケージを処理する時間を確保するため、1月23日から24日までに最終案を通過させる必要がある。国土安全保障予算を巡る紛争が解決しない場合、同省のみを対象とした短期間の暫定予算が必要になる可能性がある。
「トランプ関税」ってなんだ
「トランプ関税」の衝撃
トランプ大統領は4月2日、日本を含む各国に対して相互関税を発表し、日本に対しては24%の関税措置を発行するとしました。大統領による関税措置の発行は国内外からも賛否を含めた議論を呼んでいます。
大統領は関税をかけられない
ところで、大統領というのは本来、他国からの輸入品に対して関税をかける権限を持っていません。関税を設定する権限は憲法上、連邦議会に与えられており、大統領はその権限の一部を議会から付与されて使用していることになります。
大抵の場合、自由貿易協定など特定の枠組み内で関税を調整するための権限を大統領に与えるための法律を議会が制定しており、その手続きに則って大統領が他国との交渉、関税の設定を行います。自由貿易協定などの場合には、交渉内容を議会に通知し、承認される必要があると定められています。
関税のかけ方
では、今回のトランプ関税では、どのような権限で関税を設定しているのでしょうか。今回利用されたのは、International Emergency Economic Powers Act (IEEPA)という法律で、緊急事態を宣言することで、大統領が経済的活動の規制を行うことができるとされています。この法律はこれまで経済制裁を行うために用いられてきた経緯があり、これまで関税の設定にIEEPAが利用された事例はありません。
IEEPAによれば、National Emergency Actにおける緊急事態を宣言することで、「一部または部分的にアメリカ外部に大元が存在する、アメリカの安全保障・外交政策・経済に対して稀な、または異常な危機に対応するため」に必要な経済活動に対する規制を行う権限が大統領に与えられています。この条項を用いてこれまで、テロ活動などに対応するための経済制裁などが実施されてきました。
今回のケースは、この緊急事態において行うことのできる経済活動への規制として関税を設定するものであり、潜在的には司法における判断の対象となる可能性があります。ただし、緊急事態の宣言に基づく関税の設定は、類似の条文を持つTrading with the Enemy Act (TWEA)に基づき、ニクソン政権下で1971年に実施されています。この際には日本と西ドイツに対して10%の関税措置が行われ、裁判所でも有効として認められています。裁判所の事実認定が同一となる場合には、今回も関税措置を認める判断を下すと考えられます。
関税措置と議会-大統領関係
緊急事態を宣言する過程自体には、議会が関係することはありません。ただし、議会は合同決議(Joint Resolution)を発行することで、緊急事態を取り消すことができます。合同決議とは、通常の法案と同様に、上下院において賛成多数を持って可決する決議案のことで、両院を通過した後に大統領の署名によって発行されます。
現在、上院において先行して出されたカナダへの緊急事態に基づく関税措置について、緊急事態を取り消すための合同決議が提出されており、共和党からも賛成を表明する議員が数名出ています。現実的には、下院共和党から造反を出すのは難しいことや、大統領による拒否権の発動を加味すれば、実際に合同決議が発行する形でカナダや、他の国に対しての関税措置を解除するのは難しいと考えられますが、共和党内からの異論が議会やメディアを通じて拡大してくれば、設定した関税水準を維持し続けるのは難しいと思われます。
誰が貧困政策を担うのか?
最近見かけた本、Miler, Kristina C. 2018. Poor Representation: Congress and the Politics of Poverty in the United States. Cambridge, England: Cambridge University Press.が面白い話をしていたので。
概要
連邦議会において、貧困者がどう代表されているのか?というお話。結論からすれば、貧困者としては代表されてないよねという内容になっています。本書が面白いポイントは、議員が貧困対策の法案を提出・審議する時には、その主たる担い手が、女性や黒人といったマイノリティ問題に関心を持つ議員になっているという点です。
代表と貧困
貧困対策というのは結構面白い観点で、結論として、マイノリティ支援に引き取られているというのもかなり重要な指摘ではないでしょうか。アメリカの場合、所得階層が高い人ほど政治に参加しやすいということを考えれば、議会における代表のされ方にも大きな違いが出てくるのは驚くべきことではありません。その結果、貧困層一般への施策を唱導する議員は限定的になる、というのも事実認識としては妥当でしょう。
貧困対策がマイノリティ支援に引き取られるということは、貧困対策の言説や、場合によっては具体的な政策内容がマイノリティ支援的な視点から展開されがちになるということを意味するでしょう。つまり、貧困によって人種や性別関係なく生活苦に直面する一方で、それを支援する側が社会的属性によって区分されやすくなるわけです。
ここで、社会的属性が貧困支援と関わってくる背景には注意を払う必要があるでしょう。アメリカの歴史において、黒人や女性など、特定の社会的属性の人々が、白人男性に比べて相対的に機会を得にくかった、逆に言えば、白人男性の場合には相対的により多くの機会と資源へのアクセスを得てきたという背景があります。結果として、異なる社会属性集団間での社会・経済的地位に隔たりが生まれてきたわけです。そうした背景から、特定の社会的属性への支援を主たる政策目標として担う議員や集団というのも形成されるということになります。
貧困対策というのは、こうした社会集団間の差異を形成する重要な要因のひとつですから、当然ながらマイノリティ支援の中でも扱われることになります。貧困の結果として教育や健康へのアクセスが困難になり、結果として社会的・経済的地位向上も難しくなるという負のスパイラルを解消するためには、貧困対策が極めて重要になってきます。
このことと、貧困を切り出してアプローチしようとする議員の不在が組み合わさることで、担い手のいる集団に偏ったパッチワーク的な貧困政策が行われる危険性が生じるわけです。マイノリティー支援は基本的に、従来の政策において見逃されてきた人々を支援しようとする発想から展開されますから、そうでない人々、マジョリティーであると考えられてきた人々を特に支援しようとする議員・団体が不在になりがちなわけです。
しかし、マジョリティーだからといって貧困に陥る人がいないわけではありません。副大統領JDヴァンスの著書『ヒルビリーエレジー』も有名になりましたが、こうした問題は1960年代から常に指摘され続けてきました。他方で、こうした人々への支援を積極的に担おうとする議員が少なかったことも事実です。
何が起きるのか
受け手の目線
こうした背景を踏まえると、ひとつには受け手の目線から重篤な問題が生じうると考えられます。代表する議員の不在というのは政治側の問題であり、支援を受ける側にとっては重要な問題ではありません。受け手からすれば重要なのは、自身に対してどのような支援が整備されているのかという問題になるからです。
支援を構築する人々に偏りがあるということは、支援の内容に一定の方向性を付与します。つまり、意図や背景はどうであれ、特定の人々を想定した支援が形成されやすいという構造が成立することになるわけです。このことは受け手からすれば、自分たちを無視して特定の人々のみを優遇しているとも映りかねません。
支援を担う人々のバランスが崩れることで、個別には重要な課題にアプローチしつつも、全体像としての評判が落ちるとなれば、問題も大きくなります。これは、既存の貧困対策を担う人々に、他のところも見ろ、という話ではなく、貧困対策という全体像を捉え、課題解決のための政策を打つ必要がありますという話です。
パッチワーク的政策
もう少し議会研究的なところに引きつけると、こうした主導する議員らが細分化され、全体として政策がパッチワーク的に形成されてしまう、という事例は貧困だけでなく色々と考えられます。制度から見れば、委員会を中心とした議会の審議システムは、複数の委員会にまたがる政策課題を適切に処理することを苦手とします。単純に審議過程の非効率ということを超えて、貧困政策のようにパッチワーク的に課題にアプローチするような政策分野が形成されているという可能性はあるかもしれません。
いずれにしても、アウトプットの部分とその効率性に注目した政策研究が、議会制度的な面からアプローチできると面白いかもしれないですね。データか資料か良いのが思いついたらそのうちやろうかと思います。
下院のPoints of Order
本日のレポート:Heitshusen, Valerie. 2018. “Points of Order, Rulings, and Appeals in the House of Representatives.” 98–307. Congressional Research Service. https://crsreports.congress.gov/product/pdf/RS/98-307.
- 下院におけるpoints of orderの仕組み
- 基本的には、floorの審議中にmeasureやamendmentに規則的な瑕疵がある場合に異議を唱えるもの
- points of orderできないもの
- special rule
- unanimous consent
- suspension
- 適切なタイミングにする必要
- 基本はmeasureかamendmentが読まれた時
- reserve できる
- 'regular order'の要求があるとできない
- points of order → (場合によっては)debate → ruling → (場合によっては)appeal
- appealされた場合はmajority voteで棄却できる
- 半世紀は通っていない
self-executing rules
今日のレポート:Oleszek, Walter J. 2008. “‘Self-Executing’ Rules Reported by the House Committee on Rules.” 98–710. Congressional Research Service. https://www.everycrsreport.com/files/20080519_98-710_d56c262870166bafd8ec6e57c1c18c2da4c90fac.pdf.
- self-executing rulesについての解説
- 元々は上院で付された修正条項を下院での個別審議を省いて法案に反映するために使われていた手続き
- 最近は重要な修正提案を成立させるために用いられることも
レポートには書いてないけど、self-executing rulesはspecial ruleを書いているresolutionの一項目として修正内容を記述する。ので、resolutionの採択=ruleの採択=修正案の承認になる。
予算法案と権限法案
今日のレポート:Saturno, James V. 2023. “Authorizations and the Appropriations Process.” R46497. Congressional Research Service. https://crsreports.congress.gov/product/pdf/R/R46497.
要するに、
- appropriation と authorizationの関係について
- 重要な点
- appropriationとauthorizationとの区別は議会内部のものであって、憲法上具体的な区別が存在するわけではない
- 議会規則について
- 両者の区分は各院の規則によって定められる
- 未認可の予算 unauthorized appropriation が予算法案に組み込まれている場合、floorで議員は points of order を提起して provision の削除・修正条項の審議取りやめを求めることができる
- 下院での points of order を waive する手段として、suspension・unanimous consent・special rule などが利用可能
- 法律成立後
- これらの手続きは議会の内規であるために、成立した予算は unauthorized であったとしても法的根拠に基づくものとして執行可能
- 逆に、予算がつかないからといって、authorizationで特定の機関に求められる行動が免責されるわけではない